『死にたくなったら下を見ろ、俺がいる!』数人の警察官に渋谷のスクランブル交差点で押さえ込まれた山田孝之扮する村西とおるがカメラに向かいそう叫んだ。ボブ・ディランの『Like a Rolling Stone』に合わせてゆっくりと流れるエンドロールを眺めながら私の身体は小さく震えていた。昭和最後のエロ事師、村西とおる監督の自伝的ドラマ『全裸監督』シーズン2がNetflixで配信開始されたのは6月も終盤に近づいていた頃だった。草創期のアダルトビデオ業界に於いて多数の作品を製作し多大なる成功を手にしながらも、前科7犯、50億円とも言われる借金を背負いそれでも逞しく生き抜く監督の波乱万丈の半生を描いたこの作品に私は夢中になっていた。シーズン2の製作が発表されてから指折りその日を待ち望み、配信開始日の午後9時過ぎに見始めると気がつけば明け方近くまで全てのエピソードを一気に見続けていた。監督のバイタリティ溢れる生き様に感化された私は奥底から湧き上がる衝動を抑えきれず部屋中を歩き回っていた。私もアダルトビデオを撮ってみたい、それはそんな衝動だった。
そうは言ってもアダルトビデオなど素人がおいそれと撮れるものではない。私に出来ることは動画撮影オプションが可能な嬢を呼ぶことぐらいだろう。早速スマートフォンを手に検索を開始する。元来このオプションが可能な嬢はそう多くはない。数人の中から目星をつけた私は予約を済ませると車に乗り家を出た。予約の時間まではまだ余裕があるが私にはもう一つするべき事があった。ホテルに向かう道中にあるショッピングセンターに立ち寄ると真っ直ぐ衣料品コーナーに向かう。普段私はボクサータイプの下着を愛用しているのだが、やはり撮影にあたり村西とおる監督のトレードマークでもあるBVDの白のブリーフを着用すべきだと考えたのだ。購入し終えた私はそのままトイレの個室に向かい下着を履き替えた。身体にジャストフィットする下着の締め付けにより身も心も引き締まる思いだ。準備を整えた私はショッピングセンターを後にしてゆっくりとホテルに向かう。さあ、待っていろよ!私だけの『黒木香』よ。
ソファに座りながらスマートフォンを動画モードにして何度かテストを繰り返していると、小さなノック音が聞こえた。いつになく鼓動が早い。恐る恐るドアを開けると20代半ば程のやや太めの女性がやってきた。必要以上に丁寧な口調で部屋に招き入れながらそろりと全身を観察してみた。淡いブラウンの髪色に丸い顔、人懐っこい印象の垂れ目で明るく挨拶をしてくる彼女とはすぐに打ち解けることができた。料金を支払うと彼女は静かに立ち上がり私に背を向けゆっくりと服を脱ぎだした。花柄のロングスカートをするりと下ろすと薄いブルーのTバックが目に飛び込んできた。肉厚の臀部がふるふると揺れている。こちらを振り向いた全裸の彼女にそそくさと服を脱がされるとシャワーに誘われた。彼女に主導権を完全に奪われた監督失格の私はおずおずと浴室に向かってついていくのであった。
浴室を出た私は無造作に置かれた白いブリーフをもう一度履き直した。このまま全裸で始まってしまっては購入した意味がない。私はブリーフ一枚でベッドに横たわり、スマートフォンを手に取ると主演女優の登場を待ち侘びている。浴室のドアが開く音が聞こえバスタオルを身に纏った彼女はゆっくりと私の両脚の間に座り込んだ。録画を開始したことに気づくと彼女はカメラに向かい小さく微笑んだ。右手がブリーフの上からゆっくりと股間をなぞる。少しづつ膨らんでいく股間を愛おしそうに眺める彼女をカメラでじっくりと追う。画面上には妖艶な表情でじっと此方を眺める彼女が映し出されている。彼女が私の下着を剥ぎ取るとすでに限界まで硬直したものが禍々しく現れた。カメラ越しに見る自らの陰茎は普段とはまるで別物のように卑猥さを増し熱くそそり立っていた。艶かしく蠢く舌先が根本から先端までゆっくりとなぞるとついついうめき声が漏れる。口内に含み激しい音を立てながら執拗に責め立てる淫らな彼女を撮り逃すまいと、快楽に打ち震えながら私の手は必死にカメラを持っていた。
私は彼女に四つん這いになってもらうと右手人差し指に避妊具を装着した。今回、彼女にはもう一つAFのオプションをつけていたのだ。彼女の肛門にローションを垂らすとゆっくりと右手の人差し指を沿わせる。左手に握られたスマートフォンはこの異常な状況を逐次克明に記録している。少しづつ人差し指に力を込めるとつるんと第一関節まで呑み込んだ。彼女の口から呻くような喘ぎ声が小さく聞こえてきた。小さく指先を動かしながら少しづつ括約筋を解していく。腸壁をなぞるように弧を描きながらじわじわと力を込めていくとすっぽりと根本まで咥え込んだ。準備が整ったことを確認した私は自身の陰茎に避妊具を装着し彼女の肛門にそっとあてがう。時が止まったかと見紛う程ゆっくりとゆっくりと前方に体重を掛けていくと、先端が少しづつ肛門を拡げながら埋没していく姿が画面に投影されていた。数分の後にはすっかり根本まで挿入された私の股間を括約筋が強烈な締め付けで刺激する。私はその締め付けを全体で味わうかのようにゆっくりと出し入れを繰り返している。そのスピードは快楽の高まりと共に少しづつ早まっていった。左手にはスマートフォン、右手は彼女の臀部を掴みながら私は一心不乱に腰を動かした。足元から湧き上がる快楽に抗うこともできず私は叫び声にも似た声を上げながら大きく果てた。私はそのまま彼女の肛門内で余韻に浸りながら小さく呟いた。『ナイスですねぇ。』