一日、一日少しづつではあるものの春がもうそこまで近づき、昼間はコートも不要なほどの気温になりつつある。今日は久しぶりに自転車に乗って出かけてみよう、そう思い立ったある日の休日のことであった。数か月ぶりに引っ張り出した自転車に跨りあてもなく走り出すと頬をゆっくりと撫ぜる風がふんわりと心地よい。このままどこまででも遠くまで行けそうな気がした。
ゆっくりと街並みを眺めながら走っていると一軒の蕎麦屋が目に付いた。以前よく通っていたが最近はとんと足が遠のいていたお気に入りの蕎麦屋。時刻はお昼時をだいぶん過ぎており、丁度小腹も空いていた私は迷わず暖簾をくぐった。狭い小上がりに腰を下ろすとぬるいお茶を啜りながらゆっくりとメニューを眺め、真っ先に目に付いた天ざるを頼んだ。ふと去り際の店員をもう一度呼び止め瓶ビールを一本追加してしまった。蕎麦を手繰りながらビールを呑んでいるとむくむくとあらぬ感情が下半身から湧き上がってくるのがうっすらと感じ取れ、私はひとり周りに悟られぬよう苦笑していた。
気が付くといつものラブホテルのソファでスマートフォンを眺めている。こんな素晴らしい日には全てが順調に進むようだ。以前より目をつけていた女性が待機中であったのだ。すぐさま電話を掛け受付を済ますと電子タバコをくゆらせながらその時を待っていた。程なくしてやってきたのは大きな瞳の美しい顔立ちの女性であった。話しぶりもほんわかと包み込む様な優しさを持ちとても愛らしかった。衣服を脱いだ彼女の胸は大きさこそそれ程ではないものの美しい造形で、また見事な曲線を描く腰の括れが堪らない色気を帯びていた。
シャワーをすませベッドに入ると彼女はそっと私に覆いかぶさってきた。暖かく柔らかな舌先が私の乳首に触れた時、つい小さく声を漏らしてしまった。ねっとりと円を描くように蠢く舌先は少しづつ上半身から下半身へと移動していく。太ももをゆっくりと撫でていた右手も徐々に付け根の方へと移っていき、すでに固く反り立っている部分をそっと掴んだ。彼女の小刻みに震える舌先が私の性器の根元から先端まで何度も往復している。私はシーツを掴みながらじっと歓喜の声を上げるのを耐え続けていた。やおら彼女に促され私は四つん這いになりお尻を高く突き上げた。背後から右手でゆっくりと陰部を刺激されると、私は快楽と羞恥の渦の中でくねくねと身悶えていた。彼女の舌先が私の菊門をゆっくりとなぞりながら、右手では執拗に陰部を刺激する。快楽が身体の中心から方々にゆっくりと広がってゆくのがわかる。私は歓喜の声を上げながら二度、三度大きく震えるとシーツの上に大量に果てた。
ホテルを出ると少し日が傾いていた。やはりこの時間になるとまだ少し肌寒い。街角にちょっとづつ明かりが灯るのを見ながら私はペダルを踏みこむ足に力を込めた。春になったらもう少し遠出をしよう、そんなことを考えながら家路へと急いでいた。