プロフィール・写メ日記から真実を紐解くこと、それは風俗における醍醐味の一つであると私は考えている。昨今のコンピューターの発達により素人でも写真の加工が容易となり、どんな女性でもそれなりの容姿に見せることは簡単だ。肌の色や目の大きさなどタップ一つで自由自在に調整できる。しかしあまりにも加工が過ぎると実物を目にした時との落差がより大きいものとなり、その店に対する信用は著しく落ちていく。「加工と実態・信用と納得」この微妙なバランス調整が優れているのが人気店であり、人気嬢なのだろう。
ある日ふと気になる写メ日記を目にした。一人一人丁寧に書き込まれたお礼、出勤・退勤情報や予約状況まで事細かに書き込まれたその文章はその女性の真面目な人柄が垣間見えるようでとても好印象であった。また添付されている写真も素人が撮ったとは思えないほど美しく考え抜かれたものだった。そして下着からこぼれんばかりに自慢の胸を大きくせり出した写真に私は釘付けとなっていた。プロフィール欄のコメントも私の興味を引くには十分過ぎるものでもあり、早速スマートフォンを手に取り、仕事が終わる時間に合わせて予約を入れた。
予約の時間まで後少しだ。私は気もそぞろに仕事をこなし終業時間を今か今かと待ち焦がれていた。先ほどから何度時計を見たかわからない。仕事が終わるや否や車に飛び乗るとホテルへとハンドルを切った。途中コンビニに立ち寄り切らしていたタバコを買った。店員の手際の悪さに多少のイラつきを覚えながら車に戻り、落ち着きを取り戻すよう自分自身に言い聞かせ、タバコをくゆらせた。予約の時間まではまだ少し余裕がある。2本目のタバコをくわえながら、改めて彼女の写メ日記をもう一度読み返していた。確かに悪くはないがそれほど期待できるものであろうか。私は胸の奥からじわりじわりと立ち昇る不安を感じた。昨日はあんなに心惹かれた写真もそう騒ぐほどのものでもないような気がしてきた。やや思慮に欠けていた部分があったのかもしれない、そう思いながらもホテルに到着すると重い足取りで階段を上った。
間もなくやってきた女性は、間違いなく先ほどの写メ日記の女性だった。少し憂いを帯びた表情の彼女は部屋に入ると静かに挨拶をした。ファンデーションでも隠し切れない肌の凸凹が目に付く。写メ日記の写真では顔は隠されているがこの輪郭・髪型はまさしく彼女だろう。コートの下から表れたグレーのニットに包まれた大きな胸の膨らみは写真通りだ。確かに何一つ嘘ではなかったが、写メ日記の醸し出す陽の空気と実際の彼女の持つ陰の空気のあまりの落差に私は憮然とした面持ちで彼女を見ていた。やがて服を脱ぎ下着姿となった彼女を見ても私の気持ちが活気づくことは無かったが、いつまでこうしていても何も始まらない。敗戦処理でも精一杯投げる、それが次の勝利に繋がると信じ私は自分自身を奮い立たせた。
彼女はシャワーやベッドでも特筆すべきところは何もない至ってありきたりなものだった。丁寧で真面目なプレイではあったがそれ以上でもそれ以下でもない。私は目を瞑り意識を下半身に集中することで時間ぎりぎりになんとか果てることができ、ほっとしていた。彼女が出ていった静かな部屋で一人一息ついていた。こんな日もあるさと自分に言い聞かすと少し笑みがこぼれた。彼女が優れていたのは手技でも口技でもなく、写真の撮り方だけであった。